介護施設での着脱介助のポイント・注意点とは?

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介護施設での着脱介助のポイント・注意点とは?

はじめに

私たちは起床時や就寝時、当たり前のように「着替え」を行います。
特に理由を考えたことがない「着替え」ですが、実は日常生活を送るのにとても大切な役割を果たしています。

介護施設の利用者様は、自分だけでは着替えることができない方も大勢いらっしゃるので、着替えるために「着脱介助」が必要となります。

着脱介助はなぜ重要なのでしょうか。
どのようなポイントを意識して着脱介助を行えばよいのでしょうか。

着脱介助の重要性

着脱介助は、介護施設で当たり前のように行われているケア行為です。

どのような重要性があるのでしょうか。
またどんなタイミングで行うことが多い介助なのでしょうか。

清潔・適温を保つ
人間は、寝ている間にも汗をかいています。
介護施設では、スタッフが利用者様に快適に過ごしていただけるよう、居室などの気温管理を行っていますが、それでも寝汗でパジャマが濡れてしまうこともあります。

朝起きて濡れたままの衣類で過ごしていると、身体が冷えてしまい体調を崩す原因となってしまいます。
身体の適温を保つためにも、着脱介助は重要なのです。

入浴後に着替えたり、食事の際に汚れてしまった衣服を着替えたりするのは、清潔を保つためです。
高齢者の場合、皮膚が乾燥しやすくはがれ落ちる方もいらっしゃいます。衣服の中に落ちた皮膚は、ベッドにも落ちます。
この皮膚はダニの好物ですし、アレルギー疾患がある方は症状が発生してしまうこともあります。
着脱介助で清潔を保つことは、健康維持にも役立つのです。


生活リズムを整える
起床時や就寝時に普段着やパジャマに着替えることは、生活にメリハリをつけるのに役立ちます。
利用者様に「これから寝る時間だ」とか「起きて活動する時間だ」という意識をもっていただくことにもつながります。

寝る時間と活動する時間のメリハリがつくと、生活に良いリズムが生まれます。
生活リズムを整えると、副交感神経や交感神経の切り替えが上手になるため、健康維持に役立つのです。

着脱介助のポイントとは

着替えるという行為は高齢者にとって健康維持に重要だということが分かりました。
しかし高齢者の場合、持病や加齢による身体機能の低下によって着替えに介助が必要な場合があります。
これを「着脱介助」と呼びます。
介護者が着脱介助を行う際に意識したいポイントをご紹介します。

衣服を選ぶ
よくしてしまいがちなのが、スタッフが勝手に着替える服を選んでしまうことです。
なによりもまず、利用者様の好みを尊重し、どの服に着替えたいのか確認します。

麻痺や拘縮があるなど、身体状況によっては着替えにくい衣服もあります。
好みを尊重したら、その中から着脱しやすいデザインや形を選びます。

例えば麻痺や拘縮がある場合、首からかぶるタイプの衣服は、着替える時に負荷がかかります。
ボタンが大きいものや面ファスナー式の服など、前が開くタイプのものが着替えやすいでしょう。
袖やズボンにファスナーがついているものもありますが、肌に直接ファスナー部が当たらないように注意します。

肌着を選ぶ際には通気性や吸湿性が良いものを選びます。
寒い時期は保温性も大切です。
直接肌に触れるものですので、肌ざわりも良いもを選びましょう。
綿素材は吸湿性・肌ざわり共に優れています。

「脱健着患」を徹底する
着脱介助の基本は「脱健着患」です。
麻痺や拘縮のある方だけでなく、動かしやすいか否かも考慮する必要があります。

「脱健着患」は衣服を脱ぐときは健康的に動く方(健側)から脱ぎ、着るときは麻痺や拘縮など動きにくい方(患側)から着る、という方法です。
こうすることで、肩や肘など関節が動きやすい範囲内で着替えることができるため、利用者様に負担をかけません。

一例として、右麻痺のある利用者様なら脱ぐ時は健側(左側)から、着せる時は患側(右側)からという具合です。

着脱介助の事例

衣服選びのポイントや、着脱介助の基本が脱健着患だということが分かりました。
ではどのように実施するのか、具体的に動画を見てみましょう。

3種類の動画は、上衣の着脱介助動作です。


①右半身麻痺の方の着脱介助


右半身に麻痺がある方に、座っていただいて行う着脱介助の動画です。


「みんなの介護:片麻痺の方の着脱介助~“脱健着患”の原則とは?~」

ポイントは次のとおりです。


・原則として、自分でできることは行ってもらう
・端座位をとっている方が、上衣は着替えやすい
・安定した姿勢で着替えるため、足の底を床にしっかりつけてもらう
・麻痺側の腕を介助者が手に持ち、袖を抜いたり通したりする
・服の外から袖をたぐって丸めておいて、麻痺側の手を通しやすくする
・「迎え袖」を行い麻痺側の袖を通す


①ベッドに寝ている右半身不全麻痺の方の着衣介助
ベッドに臥床している右半身不全麻痺の方の、上衣の着衣介助です。


「カイゴ大学:寝た姿勢で行う前開き洋服の着替え介助」
一人で着衣介助を行う場合の例です。

ポイントは次のとおりです。


・袖をたぐって丸めておき、患側の腕から袖を通し、肩まで伸ばす
・健側の方へ側臥位をとってもらう(又は介助する)
・服の背中を合わせる
・健側の身体の下に、衣服を押し込む
・麻痺側に、少しだけ身体を向けてもらい健側を浮かして、押し込んだ衣服を引き出す
・仰臥位をとり、健側の肘を曲げてもらって袖に通しやすくし、肘を伸ばしてもらいながら袖を通す


側臥位をとってもらうことができない場合には、首元を支えながら上半身を少し浮かした状態で袖を通す介助を行うと、利用者様への負担が少なくなります。

①右半身麻痺の方への、かぶりの服の着脱介助

「みんなの介護:片麻痺の方もかぶりの上着が楽に着脱できる介助方法とは?」

服を選ぶ際に前開きが良いとお伝えしましたが、かぶりの服でも「脱健着患」を守ればスムーズな着脱介助が行えます。

ポイントは次のとおりです。


・原則として、自分でできることは行ってもらう
・端座位をとっている方が、上衣は着替えやすい
・安定した姿勢で着替えるため、足の底を床にしっかりつけてもらう

【脱衣介助】
・身ごろをたくし上げる
・健側の肘を後ろへ引いて袖を抜きやすくする
・利用者様に、抜いた袖と襟元を一緒に持ってもらう
・アゴを引いて、首を抜く
【着衣介助】
・服の外から袖をたぐって丸めておいて、麻痺側の手を通しやすくする
・「迎え袖」を行い麻痺側の袖を通す
・肩まで伸ばしたら、健側の手で、健側の袖と襟元を一緒に持ってもらう
・アゴを引いて、首を通す
・健側の肘を曲げてもらい、服を前に出して袖を通しやすくする。


「脱健着患」を行えば、片麻痺や拘縮があってもスムーズな着脱介助が行えますし、かぶりの上着でも利用者様への負担を少なくして介助ができます。

おわりに

着脱介助は、利用者様の体調管理や清潔を保ち、生活リズムを整えて健康を維持するための大切な介助です。

「脱健着患」などのポイントを押さえ、利用者様・介助者ともに快適な着脱介助を行いましょう。